フランス・イタリアの暴動はなぜ?日本との違いと移民原因説を整理
2026年10月、フランスとイタリアで、物価高や公共サービスの悪化に抗議するデモの一部が暴動に発展しました。10月17〜18日の週末には、警察との衝突、店舗の略奪、歴史ある建物への放火が相次ぎ、日本でも大きく報じられています。
この記事では、ピコとブラウン管くんの会話を入口に、両国で何が起きているのか、なぜヨーロッパ各地で同時に起きているのか、同じく物価高に苦しむ日本とは何が違うのか、そしてSNSで広がる「移民が原因」という見方はどこまで正しいのかを、順番に整理します。内容は2026年10月20日時点の報道にもとづいています。

最近、フランスやイタリアで暴動が起きてるってニュースをよく見るんだけど、いったい何が起きてるの?

ひとことで言うと、物価高や、学校・病院などの公共サービスへの不満から始まったデモの一部が、暴動になってしまったんだ。ただ、フランスとイタリアでは始まり方が少し違うよ。
- フランス:学校の教育環境の悪化に抗議する高校生の運動が、生活費の高騰や政府への不満を巻き込んで全国に広がった
- イタリア:SNSで呼びかけられた物価高への抗議デモが、一部で若者による暴動に発展した。フランスの動きにも影響を受けている
ここで大切なのは、数十万人が参加した平和的なデモと、放火や略奪をする暴力的な集団を区別して見ることです。デモの参加者の大半は、平和的に抗議しています。
フランス:高校生の抗議から全国的な暴動へ

フランスは学校がきっかけなの? 物価高じゃなくて?

最初はね。先生が足りない、教室がぎゅうぎゅう、校舎がボロボロ……という高校生たちの抗議だったんだ。そこに生活費への不満がどんどん合流していったんだよ。
発端は2026年9月、パリ郊外クレテイユの高校でした。教員の欠員、1クラス30人を超える過密な教室、仮設教室や老朽化した校舎などへの抗議が、パリ郊外の高校から全国へ広がり、10月初めには大学生も加わりました。高校生に催涙ガスを使う警察の映像が拡散したことも、怒りを広げたとされています。
そこへ労働組合や、2018年の「黄色いベスト運動」の復活をめざす人々も合流し、抗議のテーマは燃料などの生活費の高騰や、公共サービスの削減へと広がりました。背景には、記録的な水準に膨らんだ政府の借金と、支出を抑えようとする政府の予算方針があります。
10月17日の全国デモには、内務省の発表で約55万人(主催者の発表では約80万人)が参加しました。大半は平和的なデモでしたが、一部が暴徒化し、各地で次のような被害が出ています。
- パリ、リヨン、マルセイユ、ボルドーなどで店舗の略奪や車への放火。リヨンでは観光案内所が放火され、マルセイユでは暴徒が市庁舎に押し入った
- リモージュでは、19世紀に建てられた歴史ある市庁舎が放火され、大きく焼けた
- 内務省によると、17〜18日の2日間で約2,400人を逮捕(発表の時期や報道によって数字に幅がある)
- パリの一部(レピュブリック広場やレアール周辺)やリヨンなどで、夜間外出禁止令が出された

2,400人も逮捕!? 市役所まで燃やされちゃったんだ……。

リモージュの市庁舎は屋根が崩れ落ちて、現地の知事が「文化遺産にとっての大惨事」と言うほどの被害だったんだ。
マクロン大統領は暴力を強く非難し、「極左」の一派や犯罪目的の集団が暴れたと主張しています。首相府からは、急進左派の政党「不服従のフランス(LFI)」とその仲間が組織した動きだという見方も示されました。これに対しLFI側は「陰謀論だ」と反発し、マクロン政権のもとで公共サービスが衰えてきたことこそが原因だと訴えています。
政府の主張を裏づける具体的な証拠はまだ示されていません。暴徒がデモの本隊から離れて動いたため、警察が人員を集めきれなかったと、警察の準備不足を指摘する研究者もいます。ヌニェス内相は辞任を申し出ましたが、マクロン大統領はこれを退けました。
イタリア:SNS発の物価高デモが暴徒化

イタリアはどうなの?

イタリアでは、「Italia in piazza(イタリアは街頭へ)」というデモがSNSで呼びかけられたんだ。物価高への抗議だったんだけど、ミラノなどで若者たちが暴れて、大きな騒ぎになったんだよ。
10月16日には、学校の環境改善や教育予算の拡充を求める学生たちの「No Meloni Day(メローニ政権に反対する日)」のデモが各地で行われました。フランスの抗議運動に触発された動きだとも報じられています。
続く17日の土曜日には、市民グループがSNSやメッセージアプリで呼びかけた「Italia in piazza」のデモが、ミラノ、ローマ、トリノ、ボローニャなど13都市で開かれました。ガソリン代などの物価高や重い税負担への抗議に加え、学校や家賃への支援を求める声、軍事費より暮らしにお金を回すよう求める声も上がっています。
当初は平和的だったデモは、ミラノのドゥオーモ広場周辺で一変しました。フードをかぶった若者たちが警察に物を投げ、バリケードに火をつけ、店舗を略奪したのです。トリノやボローニャでも衝突が起きています。
ミラノでは18日(日曜日)の騒乱のあと、警察署に連行された人が271人(うち未成年220人)、逮捕者が32人(うち未成年23人)にのぼり、警察官14人がけがをしました。

連行された人のほとんどが未成年なの!?

そうなんだ。郊外から市の中心部にやってきた10代の若者が多かったと報じられているよ。
メローニ首相は19日に治安関係の会議を開き、政府はミラノへの兵士500人の追加派遣を決めました。20日の閣議では、未成年者を予防的に拘束できる時間を12時間から24時間に延ばすことなどを盛り込んだ、治安対策の緊急政令が審議される予定と報じられています。
なぜヨーロッパ各地で同時に起きているのか

フランスとイタリアで同じタイミングって、偶然なの?

示し合わせたわけではないけど、根っこにある不満がよく似ているんだ。それに、起きているのはフランスとイタリアだけじゃないんだよ。
10月17日には、ベルギーのブリュッセルやリエージュでも学校の環境や教育費をめぐるデモで警察との衝突が起き、ポルトガルのリスボンでは住宅費の高騰に抗議する数万人規模のデモがありました。スペインでも9月から住宅費をめぐる抗議が続き、アルバニアでは汚職疑惑をめぐる反政府デモや、学生による抗議が起きています。ただし、これらは一つの運動として組織されたものではなく、各国で別々に起きている抗議です。
各国に共通する背景には、次のような問題があります。
- 生活費の上昇:食料、燃料、住宅費が家計を圧迫している。イランをめぐる戦争でホルムズ海峡の海運が混乱し、燃料価格が上がったことも追い打ちをかけている
- 若者の将来不安:賃金や雇用条件が改善せず、生活の安定を見通しにくい
- 公共サービスへの不満:財政難を背景に、教育や医療などの予算が足りない
- SNSによる波及:フランスの抗議の映像や呼びかけが、ほかの国の若者にも影響を与えている
誰かが裏で扇動しているのか

これだけ同時に起きると、誰かが裏で操ってるんじゃないかって気もしちゃう。

そういう見方も出ているけど、今のところ、両国の暴動を一つの組織が操っているという証拠は見つかっていないんだ。
フランス政府は、極左の過激派などが暴動を拡大させたと説明しています。一方イタリアでは、SNSで呼びかけが急速に広がり、もともとのデモとは関係のない暴力的な集団が紛れ込んだと報じられています。
それぞれの国で暴力をあおった集団がいた可能性はありますが、国境を越えて暴動を指揮している組織があると断定できる証拠は、現時点では確認されていません。

つまり、物価高や公共サービスへの不満がたまっていたところに、一部の暴力的な人たちが加わって暴動になった、ってことかな。

そういうことだね。フランスの場合は2018年の黄色いベスト運動とも似ていて、長年たまっていた不満がまた噴き出したともいえるよ。
日本も物価高なのに、何が違う?

でも、物価高とか給料が上がらないとかって、日本も同じだよね。フランスやイタリアと何が違うの?

いい質問だね。日本は「給料が上がらず苦しい」が中心だけど、フランスやイタリアは「苦しいうえに、仕事も公共サービスも将来も不安定」という問題が重なっているんだ。不満を街頭で表す文化の差も大きいよ。
数字で比べると、意外な違いがある
OECD(経済協力開発機構)が2026年7月に公表した資料で、3か国を比べてみます。
| 指標 | 日本 | フランス | イタリア |
|---|---|---|---|
| 失業率(2026年5月) | 2.5% | 8.2% | 5.0% |
| 就業率(2026年1〜3月、15〜64歳) | 80.2% | 69.4% | 62.8% |
| 実質賃金の変化(2021年1〜3月→2026年1〜3月) | -0.1% | 0.0% | -6.1% |
出典:OECD「Employment Outlook 2026」の国別ノート。OECD平均は失業率4.9%、就業率72.1%。

日本は失業率がすごく低いんだね。

そうなんだ。日本は人手不足で、企業のほうが採用に苦労しているくらいだからね。
日本は賃金が伸び悩んでいますが、雇用の安定という点ではフランスやイタリアより有利です。一方、フランスは失業率が高く、イタリアは失業率こそ過去最低の水準まで下がったものの、そもそも働いている人の割合がOECD諸国の中で最も低い部類に入ります。
イタリアの実質賃金が2021年初めより6.1%も低いことも見逃せません。OECDの主要国の中で最大の落ち込みです。一方、フランスの実質賃金は2021年初めの水準まで戻っています。つまり今回の暴動は、賃金がどれだけ下がったかだけでは説明できないということです。
若者の置かれている状況が違う
日本でも非正規雇用や低賃金は問題ですが、仕事を探すという点では、若者に比較的多くの機会があります。
一方イタリアでは、2025年時点で18〜24歳の16%が、仕事にも学校にも職業訓練にも就いていない状態(NEET)でした。10年前の30%からは大きく下がったものの、OECD平均の13%をまだ上回っています。

日本は「働いても豊かになれない」、イタリアはそれに加えて「そもそも仕事に就く機会が足りない」って感じかあ。
フランスでは今回、学校の教育環境の悪化が抗議の出発点でした。若者の将来への不安と、公共サービスへの不満が結びついたわけです。
デモやストライキに対する考え方が違う

経済と同じくらい大きいのが、不満の表し方の違いなんだ。フランスでは、デモやストライキはごく普通の意思表示の手段なんだよ。

日本だと、デモってちょっと特別なイメージがあるかも。
フランスでは、2018年の黄色いベスト運動、2023年の年金改革反対デモ、そして今回の抗議運動と、社会問題が起きるたびに市民が街頭で声を上げてきた歴史があります。
日本では、労働条件の改善は企業ごとの労働組合や春闘を通じて求めるのが一般的で、政治的な要求を全国的なストライキで示すことはあまりありません。厚生労働省の調査では、2025年の労働争議295件のうち、ストライキなど実際の争議行為を伴ったのは77件でした。労働組合の推定組織率も16.0%と、過去最低を更新しています。

ボクが現役だったころの日本は、春闘の時期になるとストで電車が止まることもあったんだけどね。今ではすっかり見かけなくなったよ。
ただし、デモと暴動は別物です。フランスでも大多数は平和的に抗議しており、暴力に走ったのはその一部です。
政府への信頼度にも違いがある

数字で見ると、ここも意外な結果なんだ。
国の政府を「信頼している」と答えた人の割合(2025年)
| 国 | 割合 |
|---|---|
| 日本 | 46% |
| OECD平均 | 40% |
| イタリア | 36% |
| フランス | 22% |
出典:OECD「Survey on Drivers of Trust in Public Institutions 2026 Results」(2026年6月公表、2025年9〜10月調査)。0〜10点で6点以上と答えた人の割合。

日本のほうが、政府を信頼している人が多いんだ。ちょっと意外かも。
日本でも政治への不満はありますが、調査の時点ではフランスやイタリアより政府への信頼が高い結果でした。
特にフランスは、2023年の34%から22%へと大きく下がっています。2024年の国民議会の解散以降、首相が何度も交代するなど政治が不安定で、財政も厳しくなっています。学校や医療にもっとお金を使ってほしい市民と、財政赤字を抑えたい政府とのあいだで、対立が起きやすい状況です。
ただし、政府への信頼が低いと必ず暴動になるわけではありません。信頼度は、社会の不満を理解するための手がかりの一つです。
それでも、なぜ日本では暴動が起きにくいのか

結局、日本で暴動が起きにくいのは「国民性」なのかな?

それだけで片づけるのは難しいね。少なくとも3つの違いがありそうだよ。
- 雇用が比較的安定している:生活が苦しくても、仕事を失う危険に直面している人の割合が相対的に小さい
- 抗議運動が生まれるしくみが違う:フランスには、学生団体や労働組合を通じて、多くの人が短期間で集まるしくみと経験がある
- 不満が暴力に変わる条件が違う:大規模な群衆、そこに紛れ込む一部の暴力的な集団、警察との衝突など、いくつもの条件が重なる必要がある
日本でも生活への不満は、選挙やSNS、労働組合、デモなど、さまざまな形で表れています。大規模な暴動にならないからといって、不満が少ないとはいえません。
3か国を大まかに整理すると、次のようになります。
| 国 | 経済・社会問題の特徴 | 不満の表れ方 |
|---|---|---|
| 日本 | 失業率は低いが、実質賃金が伸び悩んでいる | 選挙、SNS、企業内の交渉など |
| フランス | 失業率が高く、教育や公共サービスへの不満が強い | 大規模なデモ、ストライキ |
| イタリア | 就業率が低く、実質賃金が大きく下がり、若者の就労に課題 | デモ、労働組合による抗議 |

日本は問題が小さいんじゃなくて、問題の「現れ方」が違うってことか。

そのとおり。ただ、物価高が長引いて、働いても暮らしがよくならない状態が続けば、日本でも不満が強まる可能性は十分あるよ。
「移民が原因」は本当か

SNSだと「フランスやイタリアの暴動は移民のせいだ」って投稿をよく見るんだけど、実際どうなの?

移民系の若者が暴動に参加しているのは事実なんだ。でも、暴動全体を「移民が原因」と説明するのは正確じゃない。分けて考える必要があるね。
イタリア:外国籍の若者も実際に参加している
イタリアでは、騒乱で警察署に連行された人や逮捕された人について、国籍別の数字が公表されています。ミラノで18日に起きた騒乱について、イタリアのANSA通信が19日に報じた警察の集計は次のとおりです。
| 区分 | 人数 | うち外国籍 | 外国籍の割合 |
|---|---|---|---|
| 警察署に連行 | 271人 | 60人 | 約22% |
| 逮捕 | 32人 | 13人 | 約41% |
連行された271人のうち220人、逮捕された32人のうち23人は未成年で、外国籍の人と重なる場合があります。なお、「外国籍」と「移民」は同じ意味ではありません。イタリア国籍を取った移民や、イタリア国籍を持つ移民の子どもは、外国籍の数には入りません。
一部の報道では、北アフリカや東欧にルーツを持つ移民家庭の若者も多く参加していたとされています。イタリアでは「マランツァ(maranza)」と呼ばれる、都市部で集団で行動する10代の若者グループによる迷惑行為や犯罪が社会問題になっており、今回の暴動との関連も報じられています。メローニ首相も、こうした若者グループへの取り締まりを強めると表明しました。

じゃあ、やっぱり移民が原因なんじゃないの?

そこは慎重に見たほうがいいんだ。数字から言えることと、言えないことを分けてみよう。
- 外国籍の人が暴動に参加し、逮捕されているのは事実
- イタリア国籍を持つ移民2世・3世が参加している可能性もある(国籍別の数字には表れない)
- しかし、連行された人の約8割は外国籍ではなく、参加者の大部分が移民だと証明されたわけではない
- 警察署に連行された人の全員が、罪を犯したと確定したわけでもない
移民問題がまったく関係ないと否定するのも、移民だけの問題と決めつけるのも、いま出ている数字とは合いません。
フランス:移民問題と暴動の関係はより複雑
フランスには、北アフリカやサハラ以南のアフリカにルーツを持つ住民が多く暮らしています。特にパリ郊外には移民系の住民が多い地域があり、次のような課題が以前から指摘されてきました。
- 若者の失業や貧困
- 住む地域による教育機会の格差
- 移民系住民への差別
- 警察と地域住民の対立
今回の抗議も、学校の環境が悪く、経済的に厳しい地域で激しくなりました。欧州デジタルメディア観測所(EDMO)の分析によれば、校舎の傷みや教員不足が深刻な地域は、移民2世・3世の家庭が多く暮らす地域とも重なっています。

前にもフランスで大きな暴動があったよね?

2023年の夏だね。警察官に撃たれて17歳の少年が亡くなった事件がきっかけで、全国に暴動が広がったんだ。
2023年6月、パリ近郊のナンテールで、北アフリカ系の17歳の少年ナエル(Nahel)さんが交通検問中に警察官に撃たれて亡くなり、フランス全土で暴動が起きました。
政府の監察機関(司法監察総局と行政監察総局)が、有罪が確定した成人を抽出して調べたところ、78%がフランス国籍でした。ただし、フランス国籍だからといって移民系ではないとはいえません。移民2世・3世の多くは、フランス国籍を持っています。
同じ調査では、ナエルさんの死を動機に挙げた人は8%未満でした。多くは政治的な動機を持たず、SNSでの呼びかけや集団の勢い、略奪の機会に乗じた「便乗」が目立ったとされています。
これはあくまで2023年の暴動の話です。2026年10月の暴動の参加者の出自については、信頼できる包括的な統計はまだ出ていません。
SNSで「移民原因説」が目立つのはなぜか

でも、SNSだと移民のせいって話ばかり目に入る気がする……。

実際に、そういう方向の発信が目立っているんだ。中には、まったく関係のない古い動画が使われている例もあるよ。
EDMOは10月8日、フランスの抗議運動について、暴力をふるった個人ではなく、特定の民族や宗教に責任を負わせる投稿が拡散していると報告しました。こうした投稿には、古い映像や無関係な映像も含まれており、移民の「送還(リミグレーション)」を求める主張にもつながっているといいます。
フランスの国際ニュース局France 24のファクトチェックでも、アメリカやイギリスの極右系の著名人が、2022年に起きたバス火災の映像や、サッカーの祝勝騒ぎの映像を「今回の暴動」として拡散していたことが確認されています。
ここで大切なのは、次の3つの主張を区別することです。
| SNSなどで見られる主張 | 現時点での評価 |
|---|---|
| 移民系の若者が暴動に参加している | 事実。イタリアでは外国籍の参加者の数字も出ている |
| 移民の社会統合の問題が暴動に関係している | 関係している可能性があり、検討すべき課題 |
| 暴動は移民が起こしたもので、移民がいなければ起きなかった | そこまでは証明されていない |
失業率が高いのは移民のせい?

そういえば、「フランスやイタリアは移民が多いから失業率が高いんだ」って話も見かけるけど、どうなの?

移民の失業率が高いのは事実なんだ。でも、それが国全体の失業率が高い主な原因かというと、そうとは言えないんだよ。
フランス国立統計経済研究所(INSEE)の2023年の調査(15〜74歳)では、失業率は次のとおりでした。
| 区分 | 失業率 |
|---|---|
| 移民(外国生まれ) | 11.2% |
| 移民の子ども(2世) | 10.2% |
| 移民の背景がない人 | 6.4% |
移民やその子どもの失業率は、そうでない人より4〜5ポイント高くなっています。ただし、移民の背景がない人だけで見ても、失業率は6.4%もあります。同じ年の日本(2.6%)の2倍以上です。移民は働く人全体の1割ほどなので、単純に計算すると、移民の分を除けばフランスの失業率は0.5ポイントほど下がります。影響はありますが、それを除いても、日本やOECD平均を大きく上回る水準であることに変わりはありません。
フランスの失業率の高さは、若者が学校を出てから仕事に就くまでがうまくつながらないこと、守られた正社員と不安定な有期雇用に分かれた労働市場、経験の浅い人を雇うコストの高さなど、労働市場そのものの課題によるところが大きいとされています。
一方、イタリアは、そもそも失業率が高い国ではありません。先ほど見たとおり、2026年5月の失業率は5.0%で過去最低の水準です。課題は失業率ではなく、働いている人の割合(就業率)が低いことでした。
イタリア労働省の報告書によると、2025年の外国人の失業率はEU域外出身者で9.6%、EU域内出身者で7.8%と、イタリア人(5.8%)より高めです。それでも外国人は、働く人の1割余り(約250万人)を占めています。特に、家事・介護などの個人向けサービス、農業、宿泊・飲食、建設では働き手の約18〜30%が外国人で、人手不足の分野を支えています。

移民が来ると、もとから住んでいる人の仕事が奪われるってことはないの?

多くの研究では、平均すると影響は小さいという結果なんだ。移民は働くだけじゃなく、買い物もするから、そのぶん仕事も生まれるんだよ。
経済学の研究では、移民を受け入れても、もとから住む人の失業率が上がる効果は、平均すると小さいか、ほとんど見られないという結果が多く出ています。ただし、技能の低い仕事で競合する人たち(以前からいる移民を含む)には、短期的に賃金などへの影響が出るという研究もあり、影響がまったくないわけではありません。
では、なぜ移民の失業率は高いのでしょうか。主な理由として、次のような点が挙げられています。
- 学歴や技能の差、言葉の壁(フランスでは、学歴が中学卒業程度までの人の割合が、移民の男性で38%、女性で41%と、全体の20%を大きく上回る)
- 母国の資格や職歴が認められにくい
- 失業率の高い地域(パリ郊外など)に多く住んでいる
- 採用での差別
差別については、フランス労働省の調査機関DARESが2019〜2021年に行った大規模な実験があります。同じ経歴で名前だけを変えた応募書類を約2,400件の求人に送ったところ、企業から連絡を受けた割合は、フランス系の名前の33.3%に対し、北アフリカ系の名前では22.8%と、約3割低い結果でした。

同じ経歴なのに、名前だけでそんなに差がつくんだ……。
移民の失業率の高さは、国全体の失業率も一定程度押し上げています。ただしその背景には、教育の格差や言葉の壁、採用での差別など、次に見る社会統合にかかわる問題があります。
移民政策に問題はなかったのか

じゃあ、移民政策はうまくいってたってこと?

そこも分けて考える必要があるんだ。「移民そのもの」の話と、「受け入れた人たちを社会にどう迎え入れるか」の話は別なんだよ。
移民を受け入れても、言葉の教育、職業訓練、住宅、学校などを十分に整えなければ、特定の地域に貧困や失業が集中するおそれがあります。その状態が長く続くと、若者の不満や警察との対立が強まりやすくなります。
これは、移民自身に問題があるという話とは別の、受け入れた社会が人々をどう統合していくかという政策の問題です。
一方で、外国籍や移民系の住民による犯罪も、国籍や出自に関係なく適切に取り締まる必要があります。社会的に厳しい状況にあるからといって、放火や略奪が正当化されるわけではありません。
まとめ

いろいろな話が出てきたけど、結局どういうことなんだろう?

今回の騒乱は、単純な反政府運動でも、移民だけが原因の暴動でもないってことだね。いくつもの不満が重なって、その一部が暴力になったんだ。
- 何が起きたか:フランスでは学校の環境悪化への高校生の抗議、イタリアでは物価高へのデモが、生活費や公共サービスへの不満と結びついて広がり、その一部が暴動に発展した
- なぜ同時に起きたか:生活費の上昇、若者の将来不安、公共サービスの予算不足という共通の背景があり、SNSで抗議が国境を越えて広がった
- 日本との違い:日本は賃金の伸び悩みが中心で、雇用は比較的安定している。フランスとイタリアは雇用や公共サービスへの不安が重なり、不満を街頭で示す文化もある
- 移民原因説:移民系の若者の参加は事実だが、暴動全体の原因を移民だけに求める根拠は、現時点ではない。失業率の高さも、移民が主な原因とはいえない。むしろ問われているのは、移民やその子どもたちを社会に迎え入れる政策が機能しているかどうか
抗議はフランス一国にとどまらず、ヨーロッパ各地に広がっています。これからの焦点は、各国の政府が治安対策だけでなく、生活費や教育といった根本の問題にどう向き合うかです。

物価高や公共サービスへの不満がたまっていたところに、一部の暴力が火をつけたってことだね。「移民のせい」で片づけないで、背景にある問題を見るのが大事なんだ!
参考
- Town hall in Limoges 'largely lost' to blaze set during French protests(France 24)
- France announces curfews in aftermath of violent protests(Al Jazeera)
- Cost of living protests hit Belgium, Italy, Portugal and France(Al Jazeera)
- Why France Is Rioting and Buildings Are Burning(TIME)
- Scontri a Milano, il bilancio: 271 in questura, 32 arresti(Adnkronos)
- Scontri a Milano, in arrivo 500 militari in città(LaPresse)
- OECD Employment Outlook 2026: Japan(OECD)
- Education at a Glance 2026: Italy(OECD)
- OECD Survey on Drivers of Trust in Public Institutions 2026 Results(OECD)
- 令和7年労働争議統計調査の概況(厚生労働省)
- Violence in France: The Far-Right Blames Ethnicity and Religion to Promote "Remigration"(EDMO)
- 'France has fallen': Far-right figures fuel Islamophobic claims with false student protest videos(France 24)
- Question n°11434 : Rapport IGA/IGJ émeutes juin 2023(Assemblée nationale)
- Question n°1402 : taux de chômage des immigrés(Assemblée nationale)
- Sintesi XVI Rapporto "Gli stranieri nel mercato del lavoro in Italia"(イタリア労働省)
- Discrimination à l'embauche des personnes d'origine supposée maghrébine(DARES)
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